江戸の偽薬から現代の健康商法まで──変わらぬ不安とだましの構図
目次
- 1: 1.健康ブームの裏で広がった“偽薬”の闇
- 2: 2. 幕府が動いた──“健康商法”取り締まり令の実態
- 3: 3. 現代の“健康商法”と驚くほど似ている構図
- 4: ラジオ形式トーク(ふもとあさと&仲間たち)
1.健康ブームの裏で広がった“偽薬”の闇
江戸時代の町には、いまの健康ブームにも通じる「養生」への関心が広がっていた。粗食や早寝早起き、適度な運動をすすめる養生書がベストセラーとなり、庶民のあいだでも「自分の体は自分で守る」という意識が芽生え始める。しかし、その高まる健康志向の影で、怪しげな薬を売り歩く偽薬商人たちが暗躍していた。効能を誇張した口上や、芝居がかった実演販売、さらには「飲めば万病に効く」といった荒唐無稽な宣伝まで、手口は巧妙で多彩だった。医療知識が限られ、情報の真偽を確かめる手段も乏しかった当時、庶民は不安や期待につけ込まれ、こうした偽薬を信じてしまう。健康への願いが強まるほど、詐欺の闇もまた深く広がっていったのである。
2. 幕府が動いた──“健康商法”取り締まり令の実態
偽薬が庶民の不安につけ込んで広がるなか、ついに幕府も事態を看過できなくなった。町方役人の報告には、効果のない薬を巡る金銭トラブルや健康被害の訴えが増えていたとされ、行政としても治安悪化への危機感が高まっていた。そこで幕府は、薬の販売方法を規制する取り締まり令を発布する。無許可での行商禁止、薬効を誇張する口上の禁止、違反者への罰金や営業停止など、当時としては異例の厳しい内容が盛り込まれていた。また、町役人による巡回監視を強化し、怪しい薬売りを摘発する体制も整えられたという。しかし、この取り締まり令に関する記録は驚くほど少ない。偽薬商人の多くが流動的な身分で追跡が難しかったことに加え、幕府自身がこの政策を“後世に残すべきではない話”として扱った可能性も指摘されている。結果として、この取り締まり令は歴史の表舞台から静かに姿を消すことになった。
3. 現代の“健康商法”と驚くほど似ている構図
江戸の偽薬騒動は、決して過去だけの特殊な出来事ではない。現代でも、根拠の乏しい健康食品やサプリメントが「奇跡の効能」をうたい、消費者トラブルを引き起こしている点で、当時と驚くほど似た構図が見えてくる。特に高齢者が巻き込まれやすいのは、加齢による体調不安や孤独感が“救いの言葉”に敏感になりやすいからだ。江戸の庶民が医療知識の乏しさから偽薬を信じたように、現代でも情報の過多が逆に判断を鈍らせ、「誰かに頼りたい」という心理が詐欺的商法の隙を生む。だからこそ、歴史から学べる教訓は大きい。華やかな宣伝よりも根拠を見極める姿勢を持つこと。口コミや権威づけに流されず、自分の体に必要な情報を冷静に選び取ること。江戸の人々が直面した“健康の闇”は、いまを生きる私たちに、より賢い健康リテラシーの重要性を静かに語りかけている。
ラジオ形式トーク(ふもとあさと&仲間たち)
さて、ここまで“江戸の偽薬騒動”と“幕府の取り締まり令”を見てきましたが、いやあ……思った以上に現代と似てるんですね。琳琳さん、まずは前半の振り返りをお願いできますか。
はい。江戸時代は“養生ブーム”が広がって健康への関心が高まりましたが、その裏で偽薬商人が横行してしまいました。そこで幕府が“健康商法”の取り締まり令を出したものの、記録が少なく“消された政策”のようになっている点が興味深いですね。
技術的に見ると、当時は情報の非対称性が非常に大きかった時代です。庶民は医学知識を持たず、商人は好きなだけ効能を語れた。これは現代のネット広告にも通じる構造です。
しかしロン、江戸の町にロボット犬がいたら、偽薬商人を一網打尽にできたんじゃないの?
可能性はありますね。僕なら“薬効の根拠データを提出してください”と淡々と求めます。
それ、江戸の商人は絶対に困りますよ。「いや、これは代々伝わる秘伝の薬でして……」みたいな。
ああ〜、いますねそういう人。現代でも“特許取得済みの独自成分”とか言いながら、よく見ると全然関係ないケース。
“特許”という言葉は便利に使われますが、実際には“容器の形状が特許”という場合もあります。健康効果とは無関係です。
江戸の偽薬も現代の怪しいサプリも、“専門用語で煙に巻く”という点は共通していますね。
結局、人の不安につけ込む商法って、時代を超えて形を変えて続くんだなあ。
では最後に、今回のテーマをまとめましょう。江戸の偽薬問題と現代の健康商法には三つの共通点があります。
一つ目は“健康不安につけ込む構造”。二つ目は“専門知識の不足を利用する点”。三つ目は“誇張された効能の宣伝”です。
そして高齢者が巻き込まれやすいのは、江戸も現代も同じ。体調の不安や孤独感が判断を鈍らせてしまうんですね。
だからこそ、私たちが身につけるべきなのが健康リテラシー。つまり、情報を見極める力です。
具体的には次の三つが重要です。
1. 効能の根拠が“データ”として示されているか
2. 宣伝文句が“万能感”を強調していないか
3. 第三者の評価があるかどうか
江戸の人たちが偽薬に悩まされた歴史は、現代の私たちに“賢く疑う姿勢”の大切さを教えてくれるわけですね。
はい。健康商法に惑わされないためにも、歴史を知ることは大きなヒントになります。
結局、時代が変わっても“人の心理”は変わりません。だからこそ、学び続けることが最大の防御です。
というわけで、今日は“江戸の偽薬と現代の健康商法”をテーマにお届けしました。皆さんも冷静に情報を見極めていきましょう。
