【消された王子の謎】朝鮮王朝が“存在しなかった”ことにした皇子とは

緻密な記録で知られる朝鮮王朝。しかし史書には一切登場しない“もう一人の王子”がいたと語られています。なぜ彼は歴史から消されたのか、その謎に迫ります。

1. 史書から消えた“もう一人の王子”とは

朝鮮王朝といえば、細かすぎるほど緻密に書き残された朝鮮王朝実録が有名だ。王のくしゃみの回数まで記録したと言われるほど徹底した史書なのに、なぜか存在しなかったはずの王子の噂がひっそり残っている。公式記録には一切登場しないのに、民間の伝承や一部の古文書にはもう一人の王子がいた――そんな奇妙な話が語り継がれているのだ。

では、その王子はなぜ歴史から消されたのか。当時の朝鮮王朝は、派閥争いと王位継承問題が常に渦巻く政治の時代。生まれた順番や母の身分ひとつで、王子の運命が大きく揺れ動く世界だった。もし存在してはいけない王子がいたとしたら、記録ごと消されても不思議ではない。

史書に残らない人物――それは、歴史の影に隠された最大級のミステリー。「いなかったことにされた王子」とは、一体誰だったのか。

2. なぜ王子は“抹消”されたのか

朝鮮王朝の政治は、とにかく王位継承争いが激しかった。どの派閥が次の王を担ぐかで国の行方が変わるため、王子の存在そのものが“政治カード”として扱われることも珍しくなかった。そんな中で、もし正妻ではない女性から生まれた王子や、微妙な立場の母を持つ子がいたとしたら――その出生は一気に政争の火種になってしまう。

そこで浮上するのが、「王子の存在を最初から隠してしまう」という説だ。敵対勢力に利用される前に、そもそも“いなかったこと”にしてしまえばいい。記録に残さなければ、後の時代の人々はその存在を確認しようがない。これは当時の政治では、意外と現実的な選択肢だった。

つまり、史書に名前がないのは「存在しなかったから」ではなく、「存在しては困るから消された」という可能性があるわけだ。王子が歴史から抹消された背景には、権力闘争の影が色濃く見えてくる。

3. 伝承として残った“影の皇子”の痕跡

史書には一切名前が残らなかったはずの王子だが、不思議なことに宮中の古文書や地方の口伝には、断片的ながら影の皇子の存在を示す記述がいくつも見つかる。ある宮廷日誌には「若君」とだけ書かれた人物が登場し、その正体が誰なのかは今も議論が続いている。また、地方の民間伝承には「幼くして宮中から姿を消した王子」の物語が語り継がれており、公式記録とは異なる“もう一つの歴史”が広がっている。

ここで浮かぶのが、「史書にはいないのに、なぜ民間には残ったのか」という矛盾だ。もし本当に存在しなかった人物なら、わざわざ物語として残す理由はない。逆に、何らかの“実在の影”があったからこそ、人々の記憶にとどまり、語り継がれたのではないかという推測が生まれる。

そして、この消された王子が現代でも語られ続ける理由は、そのミステリー性にある。記録にはいないのに、伝承には残る。存在しないはずなのに、どこかに痕跡がある。歴史の空白に浮かぶ影のような存在だからこそ、人々の想像力を刺激し、今なお多くの歴史ファンを惹きつけている。